なぜ、ミッドレングスにシングルフィンなのか
トライやツインのフィンセッティングが主流の今において、あえてシングルフィンを選ぶ理由。それは誤魔化しが効かないというストイックな楽しさと、波と完全に同調した時の無重力のようなグライド感にあります。
シングルフィンはレイルワークの技術がそのままライディングに反映されます。余計な抵抗がないため、一度スピードに乗った時の加速感は他のフィンシステムでは味わえません。
しかし、ミッドレングスと一口に言っても、6フィート台のスタビーから8フィートオーバーのミニログまで千差万別。さらに、ピンテール、スカッシュ、エッグ、といったボトム形状の違いで、選ぶべきフィンは変わります。
ここでは、単なるサイズ論だけでなく、テンプレート(形状)やマテリアル(素材)の観点も交え、ミッドレングスのシングルフィンの選び方ガイドラインを提示します。
フィンのテンプレートにより変わるフィーリング
レングス別の解説に入る前に、ベテランこそ再確認しておきたいのが「テンプレート(形状)」の特性です。ミッドレングスで使用されるのは以下の3タイプです。
1. The Greenough 4A Type(万能型)
ジョージ・グリーノウが考案した、最も完成されたデザイン。適度なベース幅と、細くフレキシブルなティップ(先端)が特徴です。
- 特徴: ドライブとターンのバランスが絶妙。ボトムターンで溜めたパワーを、トップでのスナップで爆発的な加速に変えます。
- 相性: ほぼ全てのミッドレングスにマッチしますが、特にエッグやピンテールのボードで「流れるようなライン」を描きたい時に最適です。

2. Upright / Pivot Type(ピボット型)
レイク(後方への傾き)が少なく、直立した形状。
- 特徴: 回転性が高く、ピボットターンが容易。また、ノーズ寄りにポジションを取った際のホールド感も強い。
- 相性: 7’10″〜8’0″以上の長めのミッドレングスで、少しクラシックな動きや、タイトなポケットでのターンを求められる場合に有効です。

3. Flex / Hull Fin Type(フレックス型)
ベースは狭く、全体的に細長く、極端にフレックス(しなり)するタイプ。リドルなどのディスプレイスメント・ハルには必須。
- 特徴: ターン後半の「伸び」が異常に強い。波のフェイスを舐めるような感覚。ただし、脚力で強引に曲げようとすると機能しません。
- 相性: ハルボトムのボード、またはスピード重視のスタビー。

レングス別・おすすめシングルフィン解説
ここからは具体的なレングスに合わせて、推奨するフィンのサイズとタイプを解説します。ただし、これはあくまで基準であり、**「テール幅が広い=フィンを大きく」「テールが絞られている=フィンを小さく」**という補正を念頭に置いてください。
【Zone 1】ショートミッド(6’6″ 〜 7’0″)
このレンジは、ショートボードからのトランジションや、サイズのある波での使用が多いゾーンです。求められるのは「軽快さ」と「反応の良さ」。
- 推奨サイズ: 7.0インチ 〜 7.75インチ
- ベテランへの提案:
この長さで8インチ以上のフィンをつけると、ボードが重く感じられ、せっかくの機動性が死んでしまいます。- アクション重視なら: 7.0インチの「Greenough 4A」テンプレート。ベースが少し狭いものを選ぶと、トップでの抜けが良く、ショートボードに近い感覚でリッピングが可能です。
- チューブ・大波狙いなら: 7.5~7.75インチの少しレイクが強いタイプ(フィンが寝ているもの)。ホールド性を高め、ダウンザラインでの安定感を確保します。
【Zone 2】ザ・ミッドレングス(7’2″ 〜 7’6″)
最もポピュラーで、ミッドレングスの醍醐味である「トリム」と「ターン」のバランスが良いゾーン。いわゆる「エッグ」形状が多いのもこのサイズです。
- 推奨サイズ: 7.5インチ 〜 8.5インチ
- ベテランへの提案:
このクラスでは、フィンの位置(前後)で性格が激変します。- 基本セット: 8.0インチ前後の「Greenough 4A」または「L-Flex」。これがゴールデンスタンダードです。
- ドライブ重視: 8.5インチを選び、ボックスの最後尾にセット。大きなラインで、ボトムからトップへ優雅に駆け上がるサーフィンに。
- ルースさ重視: 7.5インチ〜7.8インチを選び、少し前方にセット。テールをスライドさせるようなスラッシュや、カットバックの切り返しを鋭くしたい場合に。
【Zone 3】ロングミッド / ミニロング(7’8″ 〜 8’6″)
ロングボードに近いグライド感を持ちつつ、取り回しの良さを残したサイズ。テイクオフの速さは反則級。
- 推奨サイズ: 8.5インチ 〜 9.5インチ
- ベテランへの提案:
ここでは「1フィート=1インチ」の法則が適用されやすくなりますが、ボードの重量とのバランスが鍵です。- クルージング・小波: 8.5インチ〜9.5インチの「Pivot」系や「Hatchet」系。直進安定性を高め、小さなノーズライディングも楽しむスタイル。
- マニューバー: 8.5インチの「Greenough 4A」一択。この長さのボードを意のままに操るには、フィンのフレックスを利用した反発力が不可欠です。9インチを超えるとターンが重くなるため、あえてサイズを落とし、フレックスの強いボランクロス製のフィンを選ぶのが玄人の選択です。
素材で差をつける
形状とサイズが決まったら、最後にこだわりたいのが「素材」です。安価なプラスチックや硬すぎるコンポジットではなく、以下の2つを使い分けていただきたい。
1. Volan
- 特性: 独特の緑がかった透明感が美しい、最高級のファイバーグラス。
- メリット: 非常にしなやかで、大きなフレックスを生み出します。ターンでフィンがしなり、戻る力でボードを加速させる「スナップバック」の効果が最大。
- デメリット: 実際、Volanのモデルは少ないです。
- おすすめ: ミッドレングスの魅力を最大限に引き出すなら、迷わずボランです。特にターン後半の伸びが違う。
2. Performance Glass
- 特性: 硬めで反応が速い。
- メリット: フレックスしすぎないため、パワーのある波や、掘れたセクションでもフィンが負けません。
- おすすめ: 台風スウェルやリーフブレイクなど、波のパワーが強い時。または、脚力に自信があり、ガッツリとレイルを入れるスタイルのサーファー向け。
セッティングの妙(フィンの位置)
最後に「微調整」について。
ミッドレングスのシングルフィンは、ボックス内で数センチ動かすだけで別物のボードになります。
- 前寄り(ノーズ側):
ボードの回転半径が小さくなり、ルース(動きが軽い)になります。小波の日や、ボードを動かしたい時は前へ。ただし、ドライブ感は減ります。 - 後ろ寄り(テール側):
直進安定性とドライブ感が増します。大きなラインを描きたい時、波のサイズがある時は後ろへ。ただし、ターンは重くなります。
【プロの裏技】
まずはセンター(真ん中)で乗り、そこから「今日はもう少し切れ込みたいな」と思ったら5mm前に。「もっと溜めが欲しいな」と思ったら5mm後ろに。この5mmの違いを感じ取れるのが、シングルフィンの楽しみです。
2026年シーズン ミッドレングスおすすめシングルフィン5選
【No.1】True Ames / Ryan Lovelace v.Bowls

もし貴方が、7フィート台のミッドレングスを持っていて、このフィンを試していないなら、それはボードの性能の半分も引き出せていないかも。
ライアンの代表作であるサーフボード「v.Bowls」のために開発されたこのフィンは、歴史的名作であるGreenough 4Aをベースにしつつ、トップ(先端)とボトム(ベース)を大胆にカットしています。
- 特性:
- 圧倒的なドライブ: 4Aよりもティップの面積が広いため、ターン後半の伸びが段違い。
- スムーズな切り返し: ベース幅を少し削っているため、ドライブするのに重くない。レイル・トゥ・レイルの移行が驚くほど滑らかです。
- 推奨マテリアル: VolanでもPerformance Glassでも良いですが、Volanタイプは品薄となっています。
- レングス別・推奨サイズ:
- 6’10” 〜 7’4″: 7.75″
(短めのミッドレングスで、ショートボードのような切れ味とドライブを両立させたい場合に最適) - 7’6″ 〜 8’0″:8.5″
(このサイズが最も「v.Bowls」らしさを感じられます。大きなラインでのカットバック、ボトムターンでの溜め。大人のサーフィンの極みです)
- 6’10” 〜 7’4″: 7.75″
【No.2】True Ames / George Greenough 4A
ミッドレングスのシングルフィンを語る上で、このフィンを避けて通ることはできません。1970年代、ジョージ・グリーノウがマグロの尾ひれからインスピレーションを得て開発したこのテンプレートは、半世紀経った今でも「世界で最も優れたデザイン」と称されます。
- 特性:
適度なベース幅がドライブを生み、細く絞られたティップ(先端)が驚くほどのフレックス(しなり)を提供します。ボトムターンで溜めたエネルギーを、トップでのスナップで一気に開放する感覚は、このフィンでしか味わえません。 - 推奨マテリアル:
Volan(ボラン)タイプがおすすめ。通常のファイバーグラスよりも粘りがあり、4A特有のフレックス効果を最大化します。 - おすすめのセッティング:
- 7’0″ 〜 7’6″: 7.5″ 〜 8.0″
- 7’8″ 〜 8’2″: 8.5″
- ターゲット: エッグ、ピンテール、あらゆるミッドレングスの「基準」を作りたい方。
【No.3】Deflow / Iñigo Agote Single
フランスのサーフグッズメーカー Deflow のミッドレングスフィン。ベースが大きいが、レイク(角度)は寝ているため、力強いターンができる。
- 特性:
- 力強いターン: ベースが広いため、力強いターンができる。
- レングス別・推奨サイズ:
- 6’10” 〜 7’5″: 7.5″
(7.5のワンサイズ。短めのミッドレングスに最適)
- 6’10” 〜 7’5″: 7.5″
【No.4】FCS / Christenson Tracker
現代のオルタナティブシーンを牽引するクリス・クリステンソンがデザインした名作。グリーノウ4Aに比べてベースが広く、全体的に少し太めのシルエットですが、レイク(傾き)が絶妙に設計されています。
- 特性:
4Aよりも「直進性」と「ドライブ」に優れています。ターンの切れ味よりも、ダウンザラインのスピードや、チューブの中での安定感を重視するデザイン。抵抗が少なく、パドルが速く感じるという声も多いモデルです。ワンタッチのフィンで、取り外しが容易。 - マテリアル:
クリアやスモークのファイバーグラスモデルが一般的ですが、硬めのフレックスがこのフィンの「走る」特性にマッチします。 - おすすめのセッティング:
- 7’0″ 〜 7’5″: 7.5
- 7’8″ 〜 8’2″: 8.5″
- ターゲット: 掘れた波、ポイントブレイク、あるいは「横に走るスピード」を最優先したい方。
【No.5】True Ames / Skip Frye
サンディエゴの巨匠、スキップ・フライのテンプレート。非常にベースが狭く、全体的に細身で直立気味のシルエットが特徴です。
- 特性:
とにかく「ドラッグ(抵抗)」が少ない。ボードが軽く感じられ、小さな力でスイスイと動きます。その分、強い脚力で踏ん張ると抜けやすいですが、波のパワーに合わせて優しくレールを入れるベテランの技術があれば、最高のルース感とスピードをもたらします。 - おすすめのセッティング:
- 6’6″ 〜 7’2″: 7.5″
- 7’4″ 〜 8’0″: 8.5″
- ターゲット: ボードの動きを軽くしたい方、または6フィート台の短めのミッドレングスに乗る方。

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