はじめに:なぜSTRIVEビンディングなのか?そしてなぜ調整が必要なのか?
フリースタイルスキー界隈で今、最もホットなビンディングといえば「STRIVE(ストライブ)」シリーズ(STRIVE 14, 16, 12など)です。これまで名機とされたSTH2シリーズの後継として登場し、極めて低い重心と、ダイレクトな雪面コンタクト、そして軽量性が特徴。
Salmon や ARMADA が STRIVE としてビンディングを出していますが、全部ブランドが違うだけで同じものです。
フリースキーヤーにとって、ビンディングの調整は単に「ブーツが入ればいい」というものではありません。
エアの着地、パークでの激しい動き、スイッチライディング……。これらに耐えうる適正な「前圧(ぜんあつ)」がかかっていないと、滑走中に板が外れて大怪我をしたり、逆に外れるべき時に外れず膝を壊したりする原因になります。
特にSTRIVEは、従来のビンディングよりも構造がスマートになっている分、正しい調整ができているかどうかが、その高性能を引き出せるかの分かれ道になります。
※注意※
本記事は、すでに板にビンディングが取り付けられており、ブーツサイズが変わった際の「微調整」を目的としています。ビンディングの取り付け位置自体を大幅に変える(穴を開け直す)作業は、専用のゲージと技術が必要なため、プロショップへ依頼してください。
目安として「ブーツのソール長が±10mm〜15mm程度の変化」であれば、今回紹介する方法で調整可能です。

準備編:必要なものを揃えよう
作業を始める前に、道具を確認しましょう。特別な専用工具はほとんど必要ありません。
- スキー板(STRIVEビンディング装着済み)
- 新しいスキーブーツ
- 片足だけでOKです。
- プラスドライバー or マイナスドライバー(大)
- 家庭用の小さなドライバーではなく、柄が太く、先端が大きいものを用意してください。STRIVEの調整ネジは大きいため、小さいドライバーだとネジ山を舐めてしまいます。
- 明るい作業スペース
- メモリやインジケーターを目視確認するためです。
基礎知識:ソール長(Sole Length)とは?
調整の前に、ブーツの「ソール長」を確認しましょう。
「足のサイズ(26.5cmなど)」と「ソール長(305mmなど)」は別物です。
- 足のサイズ(モンドポイント): 足の実寸。インナーブーツのサイズ。
- ソール長(mm): ブーツの底(つま先からかかとまで)の物理的な長さ。
通常、ブーツのかかとの側面や底面に「305mm」「310mm」といった数字が刻印されています。
古いブーツと新しいブーツで、この数字がどれくらい違うか確認してください。
同じ26.5cmのブーツでも、メーカーが変わればソール長が数ミリ変わることはよくあります。この「数ミリ」がビンディングにおいては命取りなのです。
実践編:STRIVEビンディング調整の3ステップ
それでは実際に調整していきましょう。STRIVEビンディング(特に最新のSTRIVE GWモデルなど)は、ユーザーフレンドリーな設計になっているため、手順さえ守れば簡単です。
ちなみに、私の場合は、以下のギアで作業しています(ARMADA AR ONEシリーズはとてもおすすめです)。
ブーツ
ARMADA AR ONE 120 GW
ビンディング
ARMADA STRIVE 14 GW (ブラック)
ステップ1:トゥピース(つま先側)の確認
従来のSTH2などのビンディングでは、つま先の高さや幅を手動で調整する必要がありました。紙を挟んで引き抜くテストをした経験がある方もいるでしょう。
しかし、STRIVEビンディングの多く(特に14 GWなど)は、「オートマチック・ウィング&トゥ・アジャストメント」を採用しています。
これはどういうことかと言うと、「つま先側の調整は基本的に不要」ということです。
ブーツを履いて踏み込めば、バネの力で自動的にブーツのコバ(先端部分)の高さと幅に合わせてフィットしてくれます。
- 確認事項:
- ブーツのつま先に雪や泥がついていないか確認してください。
- GripWalk(グリップウォーク)ソールのブーツを使用する場合、ビンディングに「GW」マークがあるか確認してください(STRIVEは基本的に対応しています)。
これでつま先側の心配はありません。メインの作業は「ヒールピース(かかと側)」になります。
ステップ2:ヒールピースの調整(仮合わせ)
- ブーツをセットしてみる
まず、調整なしでブーツをビンディングにはめてみます。- スカスカの場合: ヒールピースが後ろすぎます。前に出す必要があります。
- 入らない(キツすぎる)場合: ヒールピースが前すぎます。後ろに下げる必要があります。
- 調整ネジを見つける
STRIVEビンディングのヒールピース後方下部に、調整用のネジがあります。- 金属製のタブを持ち上げるタイプ(工具不要のデモビンディング)ではなく、フリースキー用は通常ネジで調整します。
- ネジを回して位置を移動させる
ドライバーを使ってネジを回します。- 時計回り: ヒールピースが「前」に進みます(ソール長が短いブーツ向け)。
- 反時計回り: ヒールピースが「後ろ」に下がります(ソール長が長いブーツ向け)。
- 微調整
- ブーツをセットしていない状態で、新しいブーツの長さになんとなく合う位置までヒールピースを移動させます。

ステップ3:最も重要な「前圧(フォワードプレッシャー)」の調整
ここが「素人」と「玄人」の分かれ目であり、安全に関わる最重要ポイントです。
単にブーツが「カチャッ」とハマれば良いわけではありません。ビンディングがブーツを適切な力で前方へ押し付けている状態、すなわち「適正前圧」が出ているかを確認します。
STRIVEの前圧確認方法は、非常に視覚的で分かりやすいです。
- ブーツをビンディングに装着する
「ガチャン!」と音がするまでしっかり踏み込んで装着してください。 - ヒールピース後方のネジ(インジケーター)を見る
先ほど回した調整ネジ自体が、前圧のインジケーターを兼ねています。
ブーツを装着した状態で、ネジの頭の位置を確認してください。- 適正状態: ネジの頭が、ハウジング(周りのプラスチック部分)と「ツライチ(平ら)」、もしくは「わずかに凹んでいる」状態。
- 圧が強すぎる(キツい): ネジの頭がハウジングより「奥に引っ込みすぎている」。
→ ネジを「時計回り(前へ)」回して締め込みます。 - 圧が弱すぎる(緩い): ネジの頭がハウジングより「飛び出している」。
→ ネジを「反時計回り(後ろへ)」回して緩めます。
- “ツライチ”になるまで調整
- ブーツをはめた状態で、ネジの頭がハウジングと面一(ツライチ)になるポイントまでドライバーでネジを回して調整します。これで調整完了です。


【プロのコツ】
フリースキーヤーの場合、激しいランディングで誤解放するのを防ぐため、「ほんの少しだけ強め(ツライチよりわずかに奥気味)」を好む人もいますが、基本はメーカー推奨の「ツライチ」に合わせてください。強すぎるとブーツの変形や、いざという時に解放しないリスクが高まります。
最終確認:解放値(DIN)の設定
ソール長の調整(前圧調整)が終わったら、最後に解放値(DIN)を確認します。
ソール長が変わると、テコの原理の関係で、適正な解放値も微妙に変化することがあります。また、ブーツが小さくなった(ソール長が短くなった)場合は、理論上、解放しにくくなるため数値を再考する必要があります。
- トゥピースとヒールピースの数値窓を確認:
自分の体重、技術レベル、ソール長に基づいた適正値になっているか確認してください。
(※解放値の計算サイトなどを参考に、自己責任で設定するか、不安な場合はここだけショップで相談するのも手です)
私の場合は、解放値に変化はなかったので、調整することはなかったです
トラブルシューティング:こんな時はどうする?
Q. ネジを限界まで回してもブーツが入らない、またはスカスカになる。
A. リマウント(付け直し)が必要です。
ビンディングの調整幅(ヒールトラックの長さ)には限界があります。通常、取り付け位置から前後10mm〜15mm程度しか動きません。
もし、295mmのブーツから325mmのブーツに変えた場合などは、調整範囲を超えているため、ショップに持ち込んで「穴の開け直し(リマウント)」を依頼してください。無理にネジを回すと脱落します。
Q. ブーツをはめると、ヒールピースが少し浮いている気がする。
A. 前圧が強すぎる可能性があります。
前圧が強すぎると、ブーツが完全にはまりきらず、ヒールカップが浮くことがあります。インジケーター(ネジの頭)が飛び出しすぎていないか再確認し、少し緩めてみてください。
Q. STRIVE 14と16で調整方法は違う?
A. 基本的には同じです。
バネの強さや素材の違いはありますが、ソール長調整(前圧調整)のメカニズムは共通しています。
まとめ:自分で調整できれば、フリースキーはもっと自由になる
STRIVEビンディングは、新しいブーツにフィットしているはず。
作業の要点まとめ:
- 道具は大きなプラス or マイナスドライバー1本。
- トゥピース(つま先)はオート調整なので触らなくてOK。
- ヒールピースのネジを回して位置合わせ。
- ブーツをはめた状態で、後ろのネジが「ツライチ」になれば前圧OK。
この一連の流れを理解していれば、例えば友人と板を交換して試乗する時や、ゲレンデで少し違和感を感じた時に、その場でサッと調整できるようになります。
ショップへ行く往復の時間と工賃を節約できた分、リフト券代に回したり、美味しいゲレ食を楽しんだりできます。
ただし、ビンディングは安全に関わる最重要パーツです。調整後は必ず、平らな場所でブーツの脱着テストを行い、違和感がないか確認してからリフトに乗るようにしてください。
自分でメンテした愛機と共に、最高のシーズンを楽しみましょう!

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