私たちフリースタイルスキーヤーにとって、2026年に開催されるミラノ・コルティナダンペッツォオリンピックは、単なるスポーツイベントではありません。それは、世界最高峰のスタイルとテクニックがぶつかり合う、4年に一度の祭典であり、「2026-27シーズンのスキーギアのトレンド」を決定づける巨大な見本市でもあります。
オリンピックの表彰台に立つ選手たちが、足元に何を履いているのか。
それは、0.1ポイントを争う彼らにとって、まさに身体の一部であり、勝敗を分ける重要なファクターです。
今回は、現在のコンペティションシーンを席巻しており、ミラノ・コルティナでも間違いなく中心となるであろうスキー板のトレンドと、男女別の有力選手が使用するギアについて、徹底的に解説していきます。スロープスタイル、ビッグエア、ハーフパイプ、そしてモーグル。それぞれの種目で覇権を握るブランドはどこなのか?詳しく見ていきましょう。
男子シーン:レジェンドブランドと革新派の激突
男子のフリースタイル界では、圧倒的なスタイルとブランドアイデンティティを持つARMADA(アルマダ)、コンペティションでの強さを極めたFACTION(ファクション)、そしてドイツの工業力が生んだ**VÖLKL(フォルクル)**が三つ巴の戦いを繰り広げています。
ここでのキーワードは「高速安定性」と「スイングウェイト」のバランスです。
1. FACTION (ファクション)
〜コンペティションシーンの覇者〜
現在、表彰台使用率No.1の呼び声高いブランド。スイスのヴェルビエを拠点とし、軽量かつ高反発なスキー作りで、高回転トリック全盛の現代フリースタイルを支えています。
- 注目選手:アレックス・ホール (Alex Hall) / アメリカ
- 種目: スロープスタイル、ビッグエア
- 使用モデル: FACTION Studio 1
- 推定スペック: 長さ 182cm〜 / ウェスト幅 90mm
- 解説: 北京五輪金メダリスト。身長190cm近い長身の彼は、その手足の長さを活かした異次元のグラブやタップトリックが持ち味です。
彼が使用する「Studio 1(旧Prodigy 1系)」は、ウェスト90mmという、現代パークスキーの「黄金比」とも言えるスペック。太すぎず細すぎず、キッカーからレールまで全てを1本でこなします。彼は高身長なため、当然182cm以上の長いモデルを使用しますが、FACTION特有のスイングウェイトの軽さが、超高回転スピンでも板の重さを感じさせません。
- 注目選手:マテイ・スヴァンサー (Matej Svancer) / オーストリア
- 種目: ビッグエア、スロープスタイル
- 使用モデル: FACTION Studio 2
- 推定スペック: 長さ 178cm / ウェスト幅 102mm
- 解説: ※最近FISCHERからFACTIONへ移籍の噂や、FACTIONチームとしての活動が目立つ若き天才。彼のようなスタイル重視のライダーは、あえてウェスト100mm超えの「Studio 2」のような太い板を選ぶことがあります。
太い板は空中での空気抵抗を受けやすい反面、着地が「面」で決まるため、軸がズレた状態でのランディング(オフアクシス着地)でも転倒しにくいというメリットがあります。彼の変幻自在な滑りは、このワイドボディが支えています。
2. ARMADA (アルマダ)
〜フリースタイルの魂、ここにあり〜
フリースタイルスキーの歴史そのものと言っても過言ではないARMADA。多くのトッププロを抱え、常にライダー主導で開発が行われています。その板は、独特の「遊び心」と、巨大な衝撃に耐える「タフネス」を兼ね備えています。
- 注目選手:ヘンリック・ハーロウ (Henrik Harlaut) / スウェーデン
- 種目: ビッグエア、スロープスタイル
- 使用モデル: ARMADA EDOLLO
- 推定スペック: 長さ 180cm / ウェスト幅 98mm
- 解説: 「Dolla」の愛称で親しまれる生ける伝説。彼が長年愛用し、開発にも関わるシグネチャーモデル「EDOLLO」は、パーク板としてはかなり太めのウェスト98mmが特徴で下が、2025-26シーズンはオリンピックを意識してか、ウェスト91mmに大幅変更されています。。
長さ180cmは彼の身長(約170cm前後)に対してかなり長めですが、ソフトなフレックスと太さを活かして、雪面に粘りつくような唯一無二のスタイルを生み出しています。
- 注目選手:デビッド・ワイズ (David Wise) / アメリカ
- 種目: ハーフパイプ
- 使用モデル: ARMADA ARV 88
- 推定スペック: 長さ 184cm / ウェスト幅 88mm
- 解説: ハーフパイプで数々の金メダルを獲得してきた絶対王者。パイプ競技では、氷の壁を駆け上がるためにエッジグリップが重要視されるため、スロープスタイルよりも細めの板が好まれますが、彼は88mmという少し幅のあるモデルを選択する傾向にあります。
特筆すべきは184cmという長さ。パイプのR(壁の曲面)を高速で抜ける際、短い板では不安定になります。身長183cmの彼にとって、身長と同じかそれ以上の長さの板を使うことで、ボトムでの加速とエアの高さを最大化しています。
3. VÖLKL (フォルクル)
〜ドイツの質実剛健なエンジニアリング〜
- 注目選手:ビーク・ルード (Birk Ruud) / ノルウェー
- 種目: スロープスタイル、ビッグエア
- 使用モデル: VÖLKL Revolt 90
- 推定スペック: 長さ 180cm / ウェスト幅 90mm
- 解説: 現在世界最強のコンペティターの一人。彼が開発に関わった「Revolt 90」は、コンペで勝つために設計されました。
ウェスト90mmはアレックス・ホール同様のスタンダード設定ですが、VÖLKLの特徴は「硬めのフレックス」と「キャンバーの反発力」です。長さ180cmを選択し、巨大なキッカーでの着地衝撃に耐え、次のセクションへ減速することなく繋げる推進力を持っています。
女子シーン:軽量化と操作性の追求
女子シーンでは、男子以上にFACTIONのシェアが高く、そこにATOMIC(アトミック)やARMADAが食い込む構図です。女子選手は脚力とのバランスを考え、男子よりも「少し短め」「少し細め」を選ぶ傾向がありましたが、最近はスピードアップのために長めの板を選ぶ選手が増えています。
. FACTION (ファクション)
〜絶対的な信頼〜
- 注目選手:アイリーン・グー (Eileen Gu) / 中国
- 種目: ハーフパイプ、スロープスタイル、ビッグエア
- 使用モデル: FACTION Studio 0 Gu (シグネチャー)
- 推定スペック: 長さ 172cm / ウェスト幅 88mm
- 解説: 北京五輪で3メダルを獲得したスーパースター。彼女のシグネチャーモデルは、ウェスト88mmの設定です。
これはハーフパイプでの切り返しやすさと、スロープスタイルでの安定性を両立させるための絶妙な数値です。身長175cmの彼女に対し、板の長さ172cmというのは「ほぼ身長と同じ」。これは、パイプでのエアの高さを出すために有効エッジ長を確保しつつ、スピンの取り回しを損なわないギリギリのラインを攻めたセッティングと言えます。
- 注目選手:ケリー・シルダル (Kelly Sildaru) / エストニア
- 種目: スロープスタイル、ハーフパイプ
- 使用モデル: FACTION Studio 1
- 推定スペック: 長さ 164cm / ウェスト幅 90mm
- 解説: ミスのない完璧なルーティンが武器の彼女。身長168cmに対し、164cmと少し短めの板をチョイスしています。
短めの板は操作性が高く、レールでの細かい動きや、スイッチスタンスでのコントロールが容易になります。ウェスト90mmの幅が安定感を提供し、長さで操作性を稼ぐという、テクニシャンらしい選び方です。
2. FISCHER
〜金メダリストが選ぶ板〜
- 使用選手:マチルド・グレモ (Mathilde Gremaud) / スイス
- 種目: スロープスタイル、ビッグエア
- 使用モデル: FISCHER NIGHTSTICK 90
- 推定スペック: 長さ 168cm / ウェスト幅 90mm
- 解説: 2022年北京五輪と2026年ミラノ・コルティナ五輪のスロープスタイル金メダリスト(2連覇!)。非常にダイナミックでパワフルなスタイルを持ち、女子フリースタイル界のリーダー的存在。
彼女が選ぶのは、FISCHERの新しいフリースタイルモデル「NIGHTSTICK」。注目すべきは、彼女の身長(約168cm前後)に対して168cm、長めの板を選んでいる点です。
女子選手で長めの板を使うのは、脚力と技術がある証拠です。長い板は有効エッジが長く、巨大なキッカーへのアプローチで抜群の安定感をもたらします。また、ウェスト90mmの幅は、着地で多少バランスを崩しても耐えてくれる「プラットフォーム」としての役割を果たします。彼女の大胆な滑りは、このタフで長い板によって支えられているのです。
UGFISCHERのフリースタイルスキーモデルのNIGHTSTICKは性能に対して価格が抑えめで、コスパが最高です!
2. ATOMIC (アトミック)
〜軽さは正義〜
- 注目選手:テス・ルドゥー (Tess Ledeux) / フランス
- 種目: ビッグエア、スロープスタイル
- 使用モデル: ATOMIC Bent 85
- 推定スペック: 長さ 165cm / ウェスト幅 85mm
- 解説: ダブルコーク1620を決める彼女にとって、板の軽さは最優先事項です。ATOMICのBentシリーズは非常に軽量で知られます。
ウェスト85mmは最近のパーク板としては細めですが、その分エッジの切り替えが速く、空中での空気抵抗も少ないため、回転数を稼ぐのに有利です。長さ165cmは標準的で、スピンの始動を素早く行えるスペックです。
ミラノ・コルティナに向けたスペックのトレンド分析
トップ選手たちの使用ギアを見ていくと、2026-27シーズンに向けた明確なトレンドが見えてきます。
トレンド1:ウェスト幅の「90mm標準化」
かつてパークスキーといえばウェスト80〜85mmが主流でしたが、現在は男子で90mm〜98mm、女子でも85mm〜90mmがスタンダードになりつつあります。
コースが巨大化し、ジャンプの飛距離が伸びたことで、着地時の衝撃分散と安定性が求められているためです。特にARMADAのHenrik Harlautのように、あえて太い板(98mm)を選ぶことでスタイルを出す選手も増えています。
トレンド2:長さは「身長並み」が鉄則
「短い板=回しやすい」という常識は、プロレベルでは過去のものです。
高速アプローチでのバタつきを抑え、着地で耐えるために、身長と同じ、あるいは身長+5cm程度の板を選ぶ選手が増えています。David Wise(HP)やAlex Hall(SS)がその代表例です。長い板を回し切る技術とパワーが、現代のトップ選手には必須条件なのです。
トレンド3:FACTION の勢い
コンペティションスペックを突き詰めるFACTION。ミラノ・コルティナの使用率では、このFactionが席巻しています。
まとめ:あなたのスキー選びへのヒント
オリンピック選手たちが選ぶギアには、勝つための理由が詰まっています。
もしあなたが新しい板を選ぶなら、彼らのスペック選びを参考にしてみてはいかがでしょうか?
- 安定感とスタイル重視なら: ARMADAのようなウェスト太め(95mm〜)のモデル。
- コンペ志向・オールラウンドなら: FACTIONやVÖLKLのウェスト90mm前後のモデル。
- 回転数・操作性重視なら: ATOMICなどの軽量でウェスト細め(85mm前後)のモデル。
そして長さは、**「自分の身長と同じくらい」**に挑戦してみるのが、最新のトレンドに乗る秘訣かもしれません。









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